宇治の平等院






時 代 と 共 に 社 会 は 進 化 し、 ひ と は 文 明 の 恩 恵 に 与 り、 文 化 的 生 活 を 享 受 で き る よ う に な っ た 。 し か し、 目 ま ぐ る し く 発 展 し 続 け る 社 会 は、 人 び と か ら 安 息 の 時 を 奪 い、 社 会 の 干 渉 を 許 す こ と に な っ た 。 逃 れ る 術 を 持 た な い、 文 明 の 虜 と な っ た 人 び と は、 張 り 詰 め た 生 活 を 強 い ら れ、 精 神 は 次 第 に 蝕 ま れ て い く 。 こ こ ろ の 交 流 の 乏 し い 社 会 は、 懐 疑 的 な こ こ ろ を 生 じ さ せ、 人 び と は 日 々 葛 藤 の 中 で 苦 悶 す る 。 社 会 か ら こ こ ろ を 閉 ざ し、 バ ー チ ャ ル な 社 会 に 生 き る 人 び と が、 目 的 を 失 い 雑 踏 の 中 を 往 来 す る 。

安 定 剤 や 抗 う つ 薬 を 服 用 し て い る ビ ジ ネ ス マ ン が 多 い 。 会 社 に 知 ら れ た く な い た め、 他 県 の 医 療 機 関 を 受 診 し て い る 方 も い る 。 病 気 に な っ て も 安 心 し て 治 療 に 専 念 で き な い 時 代 で あ る 。 薬 は 止 め た い の だ が、 中 止 す る こ と へ の 不 安 や 薬 の 反 跳 現 象 な ど で 難 し く な る 。 悩 み は 深 ま り、 解 放 へ の 道 が 遠 ざ か る 。 そ れ な ら 生 理 的 バ ラ ン ス の 上 に 作 用 す る、 漢 方 薬 は 如 何 で あ ろ う か 。 専 門 医 が 治 療 す れ ば 副 作 用 の な い 自 然 の 回 復 が 得 ら れ る 。 化 学 物 質 で は こ う は い か な い 。

精 神 的 テ ン シ ョ ン が 高 ま れ ば、 気 の 流 れ が 停 滞 し、 そ れ に 伴 い 血 や 水 の 流 れ も 停 滞 し、 病 理 産 物 で あ る 瘀 血痰 飲 が 産 生 さ れ る 。 四 方 を 海 に 囲 ま れ 湿 度 の 高 い 日 本 で は、 人 種 の 特 性 も 加 わ り、 痰 飲 が 産 生 さ れ や す い 。 浮 腫 が 末 梢 の 血 管 を 圧 迫 し 血 流 が 停 滞 す る よ う に、 痰 飲 は 気 血 の 運 行 を 障 害 す る た め、 放 置 す る と 病 態 は 悪 化 す る 。 痰 飲 が 胸 隔 に 停 滞 し、 心 へ の 気 血 の 運 行 を 障 害 す る と、 う つ 病不 安 神 経 症 な ど が 発 症 す る 。 有 名 な 半 夏 厚 朴 湯 や 茯 苓 飲 合 半 夏 厚 朴 湯 な ど の 適 用 で あ る 。

一 方、 日 本 人 に 多 い 痰 飲 が 原 因 で は な く、 陰 血 が 不 足 す る た め 発 症 す る 精 神 疾 患 も 多 い 。 陰 血 は 体 を 構 成 す る 物 質 で あ る 。 こ れ が 不 足 す る と、 代 謝 を 亢 進 さ せ、 エ ネ ル ギ ー 産 生 を 高 め よ う と す る 。 陰 血 の 素 と な る 食 物 を 消 化 吸 収 し、 吸 収 さ れ た 栄 養 物 を 全 身 に 運 搬 し、 細 胞 内 で 陰 血 を 合 成 す る 。 こ の エ ネ ル ギ ー 代 謝 を 高 め る た め に は、 交 感 神 経 の 働 き が 活 発 に な る 必 要 が あ る 。 交 感 神 経 の 機 能 が 異 常 に 亢 進 す る と、 不 安 ・ 抑 う つ ・ い ら い ら ・ 焦 躁 感 な ど が 出 現 す る 。

こ れ を 陰 虚 火 旺 と 称 し、 治 療 は 滋 陰 清 熱 と す る 。 陰 血 不 足 は 通 常 は、 代 償 機 能 に よ り 解 消 さ れ る の だ が、 解 消 さ れ な い と な る と、 交 感 神 経 の 機 能 亢 進 状 態 は 持 続 す る 。 こ の 状 態 で は 陰 血 が 合 成 さ れ て も、 エ ネ ル ギ ー 源 と し て 灼 損 さ れ る た め、 代 償 性 機 能 亢 進 状 態 は 恒 常 的 に な る 。 体 内 の 異 常 な エ ネ ル ギ ー 代 謝 は、 火 を 産 生 し、 心 を 薫 蒸 す る た め、 種 々 の 精 神 症 状 が 出 現 す る 。 陰 血 不 足 は 月 経 ・ 出 産 を 経 た 更 年 期 の 女 性 や 高 齢 者 に 多 く み ら れ、 ス ト レ ス 等 で 容 易 に 病 的 状 態 が 引 き 起 こ さ れ る 。