上七軒の芸妓・市純さん 2018/6/16上七軒の舞妓・市彩さん






【 症 例 】 中 年 の 女 性 。 心 窩 部 が ス ッ キ リ し な い 。 食 欲 は あ る が、 い つ も 胃 が ス ッ キ リ せ ず、 気 分 も 不 快 で あ る 。 漢 方 薬 も 効 果 が な か っ た 。 今 ま で 服 用 し た も の は、 六 君 子 湯、 四 逆 散、 柴 胡 桂 枝 湯、 柴 朴 湯、 香 蘇 散、 平 胃 散、 茯 苓 飲、 半 夏 厚 朴 湯 や、そ の 合 方 。 疲 れ も な く 元 気 で あ る 。 便 通 も 良 好 。 た だ 寝 つ き が よ く な い 。

血 圧 正 常 。 舌 は 淡 紅 で 白 苔 に 被 わ れ る 。 脈 は 76 で 滑、 有 力 。 腹 部 も 充 実 し て い る 。 圧 痛 も 振 水 音 も な い 。 月 経 は 止 ま っ た よ う だ 。 多 少 気 が 立 っ て い る よ う な 話 し 方 で あ る 。 竹 筎 温 胆 湯 を 投 与 。 2 週 間 後、 胃 が ス ッ キ リ し、 寝 つ き も 良 く な っ た 。 気 分 も ス ッ キ リ し た 。 見 た 目 も 落 ち 着 い た 感 じ と な り、 話 し 方 も お し と や か に な っ て い る 。

ス ト レ ス は 胆 の 働 き を 低 下 さ せ( 胆 虚 )、 気 の 疎 通 不 利 が 生 じ、 胃に 痰 飲 が 産 生 さ れ る 。 痰 飲 が 上 逆 し 「 心 」 を 蒙 蔽 す る と、 心 の 働 き で あ る 精 神 に 不 調 を 来 た す 。 心 に 御 座 す 「 神 」 は 安 寧 で き な く な り、 不 安 感 や 不 眠 が 出 現 す る 。 胆 虚 で は 胆( き も )が 冷 え 不 安 に 苛 ま れ る 。 こ れ を 「 胆 怯 」( 注 )と 云 う 。 治 療 は 胆 の 働 き を 回 復 さ せ る た め、 胆 を 温 め る( 温 胆 )。 温 胆 と は 胆 の 疏 泄( 疏 胆 )を 改 善 す る こ と で あ る 。

温 胆 湯 の 主 た る 効 能 は 化 痰 で あ る 。 痰 は 胃( 脾 )で 産 生 さ れ る( 脾 は 生 痰 の 源、 肺 は 貯 痰 の 器 )。 竹 筎 温 胆 湯 に は 半 夏 ・ 茯 苓 ・ 枳 実 ・ 陳 皮 が あ り、 胃 の 働 き を よ く す る 。 竹 筎 は 不 安 や 不 眠 や 易 驚 に 有 効 だ が、 制 吐 作 用 も あ る 胃 薬 。 竹 筎 温 胆 湯 は こ こ ろ を 癒 し、 胃 に も や さ し い 頻 用 処 方 で あ る 。 心 の 病 や 不 眠 以 外 に 片 頭 痛 ・ PMS ・ パ ー キ ン ソ ン 病 ・ 統 合 失 調 症 な ど な どに も 用 い ら れ る 。

( 注 ) : 胆 怯 と は 中 国 語 で 臆 病( お く び ょ う )を 意 味 す る 。 中 医 学 で は 胆 の 働 き は 「 決 断 出 づ 」 で あ る 。 胆 が 虚 す と 痰 飲 が 産 生 さ れ、 不 安 で グ ズ グ ズ と 決 断 で き な い 臆 病( 胆 怯 )者 に な る 。 『 金 匱 要 略 』 痰 飲 欬 嗽 脈 証 幷 治 第 十 二 に 「 病 痰 飲 者 、当 以 温 薬 和 之 」 と あ る 。 痰 飲 を 排 除 す る た め に は 温 め る 必 要 が あ る 。 そ れ 故、 胆 虚( 怯 )を 治 す こ と を 温 胆 と 称 す 。